男が海岸沿いに打ち上げられる。
鑑識の結果、男の網膜に暖かな一一家が住まう家が焼き付いていることがわかった。
その経緯はこうだ。
男が乗った船が嵐で難破した。
男は命からがら、崖にしがみつくことができた。
ふと顔を上げると、崖の上に家があり、灯りが灯っていることに気づく。
男が喜び、助けを乞おうとしたときである。
母親と父親と子供が仲睦まじく団欒している。
理想的な場所。
もし死にかけの自分が声でもかけたりしたら、あの完璧な美しさと幸福を壊してしまう。
男は自ら手を離し、嵐の海へと消えた。
この本が気になります!
この本のツイートへ
作品のタイトル:雪の夜の話
作者:太宰治
本のリンク:この本のURLへ(外部サイト)